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広島高等裁判所岡山支部 昭和49年(行コ)5号 判決

東京都豊島区要町二丁目九番地

控訴人

岡山ゴルフ株式会社

右代表者代表取締役

三村林

右訴訟代理人弁護士

富永義政

石井文雄

鈴木信司

岡田久枝

山崎俊彦

岡山市天神町三丁目二三番地

(旧岡山税務署長事務承継者)

被控訴人

岡山東税務署長

藤井昌三

右指定代理人

中路義彦

塩見洋佑

石田富保

加藤堅

南葉克己

長安正司

右当事者間の物品税更正処分、同加算税賦課決定処分取消請求控訴事件につき、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は「原判決を取り消す。被控訴人が控訴人に対し、昭和四三年八月二九日付をもって控訴人の昭和三八年七月分から同四一年二月分までのゴルフボール製造による各月分物品税についてなした更正処分及び加算税賦課決定処分を取り消す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は主文同旨の判決を求めた。

当事者双方の事実上の主張及び証拠の関係は、次のとおり付加するほか、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。

控訴代理人は、当審における証人上田研二の証言及び控訴人代表者尋問の結果並びに鑑定人三宅益雄の鑑定結果を援用した。

理由

一、当裁判所も当審における証拠調べの結果を参酌して審究しても、控訴人の本訴請求は失当として棄却すべきものと判断するものであり、その理由は次のとおり付加、訂正するほか原判決理由記載のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決一一枚目裏九行目の「加硫」の前に「完全」を付加し、一二枚目表八行目の「不可能であること」を「困難であり、かりに一時接着したとしても、その接着力は一回ないし数回の打球により使用価値の失われる程度のものであること(当審における鑑定の結果によっても、その接着力については必ずしも明らかでなく、右認定を左右するものではない。)」に改める。

2  同一三枚目表二行目の「証言」の次に「及び原審における控訴人代表者尋問の結果」を、同七、八行目の「加工をしていたとし」の次に「(右加工の方法は中古ボールのガタバーチャを取り除かないで、その破損箇所にガタバーチャを適量かぶせた後、製造ボール用の金型を使用して焼付け、圧縮等をするものであり、修理のための特段の工具、工程はなかったという)」を、同九行目の「原告代表者尋問」の前に「当審における」をそれぞれ付加する。

3  同一三枚目裏五行目の「証人前田正泰」の次に「、当審証人上田研二」を付加する。

4  同一三枚目裏一〇行目の「信用できず、」を「信用できない。」に改めたうえ、その次に左のとおり付加する。

「なお、当審における鑑定の結果によれば、検甲一号証の一ないし二二のボールはいずれも中古ボールの外皮に新たなガタバーチャを焼付けたいわゆる修理ボールであることが認められる。しかし、右鑑定の結果によっても、右が本件係争課税期間中に作成されたものであるか否かは必ずしも明らかでないうえ、かりに右期間中に加工されたものであるにしても、右鑑定の結果によれば、右ボール(検甲一号証の七、一一、一三、一五、一九、二一)の外皮はいずれも手で容易に二層に剥離されるものであり、右二層の外皮のうち内層部分は加硫されていることが認められ、前記のとおり完全加硫された外皮に新たな外皮を焼付けて打球に耐えうる接着を得ることは技術的に困難であり、控訴人の加工技術をもってしても、右剥離の事実が示すとおり(加工後の日時の経過による製品の劣化を考慮しても)、とうてい商品価値ある製品を作り出し得なかったものであることからすると、控訴人がかかる粗悪品の混在する物品を継続的取引先である国内の練習場に一率製造ボール並の価格で移出したものとはとうてい考えられないこと、そのほか控訴人の本件係争期間中のガタバーチャの使用量、さらには控訴人の修理ボールの加工法が従業員らにすら内密に、控訴人工場長三村東ら一部の同族によってのみ夜間又は休日中ひそかに取り行なわなければならないほど技術上高度の秘密性を有していたものとは、前記三村らのいう加工方法に照らして認めがたいことなどの事実をあわせ考えれば、右検甲一号証の一ないし二二の物品は商品として移出した修理ボールの残品であるとは、とうてい認めがたく、右は原審証人粟井綾子のいう控訴人の試作品又はこれに類するものと認めるを相当とする。

もっとも、原審証人前田正泰、当審証人上田研二の各証言によれば、ボールの外度の加硫の程度(半加硫)によっては、新たなガタバーチャの接着が比較的良好であるとこはろ、控訴人の中古ゴルフボールの集荷先及び移出先はいずれも国内の練習場であり、 右練習場においては北辰化学工業等の半加硫のボールが相当数使用されていたことが認められるのであるが、右前田正泰及び三村東の各証言によれば、右練習場にはダンロップ、ブリッジストン、ファーイーストの大手三社の完全加硫ボールも相当数出廻っていて、控訴人が集荷した中古ボールには加硫状態の異なる各社のボールが混在していたところ、ボールの外観上からは加硫の状態は見分け得ないものであり、控訴人においても、修理に廻すボールの仕分けは単に破損の程度によっていたというのであることからすると、たまたま半加硫のボールについては商品価値ある修理がなされたにしても、完全加硫ボールについては前記のとおり商品価値のない粗悪品たらざるを得ないものというべきであるから、いずれにしろ控訴人があえて右粗悪品の混在する修理ボールの加工、移出にたずさわったとは認めがたいところである。」

5  同一四枚目表一行目の「甲一号証」以下同四行目末尾までを次のとおり改める。

「甲一号証は、いわゆる修理ボールに対する単なる物品税課税の質疑応答文書であり、かりに控訴人において現物を呈示しての質疑であったにしても、右の一事をもってたやすく、当時控訴人が修理ボールを加工、移出していて、右現物がその一部であるとは認めがたく、」

二  してみれば、右と結論を同じくする原判決は正当であり、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、控訴費用の負担につき、民訴法九五条、八九条を適用し、なお、職権をもって調査するに、岡山税務署は原判決言渡後の昭和四九年一〇月一日付大蔵省令第五九号により、岡山東税務署、岡山西税務署に分割され、岡山東税務署が旧岡山税務署長の事務を承継したことが明らかであるから、本訴における被訴訴人の表示をその旨改め、主文のとおり判決する。

(裁判長判事 加藤宏 判事 山下進 判事 篠森眞之)

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